環境汚染が単一の物質によって進行することは稀です。多くの場合、複数の有害物質による複合的な汚染が同時に進みます。そのため、生物に毒性があると判明した環境試料を化学分析してみても、どの物質が毒性要因なのかすぐには分かりません。
生物の応答を見て、毒性を引き起こしている物質を特定しよう、というのが下の論文の主旨です。対象生物はユスリカのChironomus tentansです。
Perkins E.J., Furey J. and Davis E., 2004,The potential of screening for agents of toxicity using gene expression fingerprinting in Chironomus tentans, Aqua. Ecosys. Health Manag., 7 (3), 399-405.
重金属やPAH(多環芳香族炭化水素)などの物質を単独で*1、ユスリカの幼虫にそれぞれ曝露し、RFDD-PCRという方法でmRNAの解析を行ています。RFDD-PCRは詳細は分かりませんが、制限酵素で切断してからPCRで増幅し、泳動することで、mRNAのパターンを取得する手法のようです。
曝露物質によって泳動のパターンが異なる、つまり遺伝子発現のパターンも異なる、という結果です。
ずいぶん手法と結果の記載が荒い論文ですが、アイデア自体は10年前にしては、今でも同様の研究がなされているので先進的だと思います。
*1:混合せずに