最近読んだ論文は、マーカー遺伝子の発現変動と有害物質の曝露濃度との関係を直線で近似していました。曝露濃度が最大でもLC50の1/10なので線形モデルで上手くフィットしたのでしょうが、それってどうなんだろうと思って下の論文を読んでみました。
Li J., Zhou L., Lin X., Yi Z. and Al-Rasheid K. A., 2014, Characterizing dose–responses of catalase to nitrofurazone exposure in model ciliated protozoan Euplotes vannus for ecotoxicity assessment: Enzyme activity and mRNA expression, Ecotoxicol. Environ. Safety, 100, 294-302.
抗菌剤ニトロフラゾン濃度(0―24 mg/L*1)とカタラーゼmRNAの用量応答反応は線形近似で可能だったようです。しかし曝露濃度とカタラーゼ酵素活性は非線形近似。酵素活性の場合は山なりの曲線で、途中にピークがある。ホルミシスhormesis。
この後続の論文では、カタラーゼでなくSODとグルタチオンペルオキシダーゼの酵素活性とmRNA発現を、同じくニトロフラゾン曝露に対して測定してます。mRNAの用量応答反応に用いられているモデルは、線形だけでなくシグモイド(S字型)もあります。
Hong Y., Liu S., Lin X., Li J., Yi Z. and Al-Rasheid K.A., 2015, Recognizing the importance of exposure–dose–response dynamics for ecotoxicity assessment: nitrofurazone-induced antioxidase activity and mRNA expression in model protozoan Euplotes vannus, Environ. Sci. Pollut. Res., 1-10.
ということで、「問答無用で線形近似」は危険そうです。濃度レベルにも気を付けるべし。
*1:この濃度がLCやECに対してどれくらいかは不明。ただおそらく非致死レベル。