備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: UCMとPAHのbioavailability・集団内・間の遺伝子発現のばらつき

UCMがPAHのbioavailabilityに与える影響」

Du J., Mehler W.T., Lydy M.J. and You, J., 2012, Toxicity of sediment-associated unresolved complex mixture and its impact on bioavailability of polycyclic aromatic hydrocarbons, J Hazard. Mater., 203, 169-175.

油などに含まれていて、GCではこぶになって測定できないunresolved complex mixture(UCM)。UCMはそれ自身でも毒性を有し、さらにPAHsのbioavailablityを変え得るという論文。

UCMを少量だけ添加した時は、PAHsの貧毛類への取り込み量が増加したけれど、UCMを多く添加するとPAHs取り込み量はUCMを添加しない時と同等になったそうです。UCM高濃度だと油のかたまり(NAPL)ができて、そこにPAHsが吸着したためにbioavailableな状態でなくなったのだろうと考察されてます。

これPAHsをスパイクしている試験だから、こういう結果になったわけで、汚染環境試料を用いればまた結果は違ったでしょうね。sequestrationの問題。

 

「集団内・間の遺伝子発現のばらつき」

Oleksiak M.F., Churchill G.A. and Crawford D.L., 2002, Variation in gene expression within and among natural populations, Nature Genetics, 32(2), 261-266.

Nature系の論文とか、精読したのは2,3本目かな。面白かったです。

集団間(Between populations,生息地が異なる同一種など)の遺伝子発現のばらつきより、集団内(Within population)のばらつきの方が大きい(有意差がでやすい)という論文。集団内で発現の有意差が確認された遺伝子は、907遺伝子中161個数(18%)もあったとか。

発現のばらつきの原因は環境とか組織の違いではないと言ってます。というのも、6か月馴致した後の魚の心室をサンプルとしているから。しかしこの論文を見ると、馴致によってばらつきが減るわけでもないですからね。genotype-environment interaction。。。

 

(追記)

この著者らの論文を他にもいくつか読んでみました(→こちら)。