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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: Biotic Ligand Modelで考慮されていない水質の影響

環境試料に含まれている溶存態重金属がどれくらい毒性に寄与しているか推定中。今扱っている実験系では、各金属のフリー態濃度までは算出できるけど、Biotic Ligand Modelのように生物リガンドへの吸着量を推定するのは難しそう。どうしよう…。

というところで、そもそもBLMってどうやって生物リガンドへの吸着量を推定してるんだろうとか疑問が出てきて、下の論文たちを読んでみました。

 

 

「ニッケルと銅の毒性は 鰓への吸着量から推定できるが、フリー態活量からは推定できない

Meyer J.S., Santore R. C., Bobbitt J.P., DeBrey L.D., Boese C.J., Paquin P.R., Allen H.E., Bergman H.L. and DiToro D.M., 1999, Binding of nickel and copper to fish gills predicts toxicity when water hardness varies, but free-ion activity does not, Environ. Sci. Technol., 33 (6), 913-916. 

本当に鰓を採取してNiの含有量を調べていたんですね。知らなかったです。同じことを小さいヨコエビでもできるでしょうか…。どうも今の多くの研究はここまでやらずに回帰分析とかで推定しているっぽい?ですが(たぶん。これとか。いつか読もう。)。

面白いなと思ったのは、硬度が変化したとき別に鰓への吸着量も一定ではなくて、硬度が上がるほど吸着量も増えたという点。なんでも硬度によって膜のイオン透過能が変化するからだとか。水質の影響がspeciationだけじゃなくて生理面にも及ぶってのは、当たり前かもしれないけど面白かったです。

あと、DiToro (2001) のBLM総説のpart I, IIもざっと見。

 

 

「広塩性のカイアシへの銅の急性毒性:汽水域・海域でのBLM発展に向けて

Pinho G.L.L. and Bianchini A., 2010, Acute copper toxicity in the euryhaline copepod Acartia tonsa: implications for the development of an estuarine and marine biotic ligand model, Environ. Toxicol. Chem., 29(8), 1834-1840. 

塩分と曝露経路(waterborne or/and dietary)を変えて、Cuの毒性を調べた研究。ちょっと複雑なので内容をつかみきれてないかも。

上に書いたような水質変化と生理面への影響が言及されてます。餌なしの水系曝露だと低塩分域ほどCu毒性は高いけれど、餌ありの水系曝露だとむしろ高塩分域のほうが毒性が高いという結果。

考察で書かれていること:塩分が下がると、浸透圧を調整するために代謝率が上がってエネルギーが欠乏しやすいんじゃないか、だから餌がないとCu毒性も必要以上に?高くなってしまうんじゃないかという話。

 

 

最初に書いた問題は、ふわっとですが解決できそうです(なんとか逃げきれそう)。上に取り上げたのは結局自分の疑問に直結しない論文でしたが、ぼんやり読んでるうちに考えがなんとなくまとまりました。

 

 

(追記 2016.03.23)

IWSKさんにコメントで教えて頂いたWHAM-Ftoxについて、ざーっと文献を読んでみました。コンセプトに関する記述重視で、他は大分読み飛ばしてます。特に複合影響に関する箇所は ほぼスルー(というかパラメータの設定とかが理解できず)。

Tipping E., Vincent C.D., Lawlor A.J. and Lofts S., 2008, Metal accumulation by stream bryophytes, related to chemical speciation, Environ. Pollut., 156 (3), 936-943.
Stockdale A., Tipping E., Lofts S., Ormerod S.J., Clements W.H. and Blust R. ,2010, Toxicity of proton–metal mixtures in the field: linking stream macroinvertebrate species diversity to chemical speciation and bioavailability, Aquat. Toxicol., 100 (1), 112-119. 
Iwasaki Y., Cadmus P. and Clements, W. H., 2013, Comparison of different predictors of exposure for modeling impacts of metal mixtures on macroinvertebrates in stream microcosms, Aquat. Toxicol., 132, 151-156.

シンプルなコンセプトゆえ、どこかに書かれてたけど、汎用性は高そう。一つ一つの現象を説明するためというよりは、幅広い影響予測とかに使われる感じなんでしょうか。