備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: ギンザケに対する6PPD-キノンの急性毒性値の更新

2020年の末にワシントンのグループによって、降雨時のギンザケ死亡の原因物質であることが報告された6PPD-キノンの続報(参考:ギンザケの死亡を引き起こすタイヤ由来の化学物質)。

 

Tian Z, Gonzalez M, Rideout CA, Zhao HN, Hu X, Wetzel J, ... Kolodziej EP, 2022, 6PPD-Quinone: Revised toxicity assessment and quantification with a Commercial Standard. Environ Sci Technol Letters.

昨年の学会(SETAC NA 42nd Annual Meeting)で報告されていた内容です。

Science論文の時は、6PPDのオゾン酸化またはタイヤからの精製物を用いて、毒性試験・定量していましたが、市販の標準品を用いて改めて実験し直すと、ギンザケに対する24-h LC50はScience論文の790 ng/Lから8倍ほど低下して、わずか95 ng/Lになったとのこと。毒性試験は市販品を用いて3回やり直しており、それなりに信頼性はありそう。95 ng/Lという低濃度は中々ないレベルで、パラチオンやクロルピリホスカドミウムなどと毒性の強さを比較されています。

毒性値が低くなったと言っても、Science論文では環境試料の定量も毒性試験も、同じ自前の合成品を用いて行ったので、環境中濃度の推定値も同様に低くなっており、Science論文における野外での6PPD-キノンのリスク評価結果は特に変わらないと思われます。