a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

本「ロボットとは何か -人の心を映す鏡」

TV番組「マツコとマツコ」のマツコロイドの製作者・石黒浩教授の新書。

 

筆者がロボット研究をしている理由・研究における興味の話が最も惹き込まれました(第一章あたり)。もちろん「不気味の谷」や「ロボット演劇」などの各論も面白いです。しかし院生として研究活動に一応携わっている身としては、「何を研究すべきか」「より深い問題は何か」という問いとそれに対する筆者の答えはより刺激的でした。

 

筆者は「あらゆることの基本問題となるのは<物事の起源>と<人間>しかない」と言い切り、人間をより理解したいという観点からロボットの研究をしているのです。この着眼点が本当にユニークですよね。実際に「人間を理解したい」という視点は、本書を一貫しています。例えば、筆者らは役者にロボットを用いた演劇をする。演劇の観客はロボットにも「心」があると感じる。そのことから心というのは実体のあるものではない、「心がある」と考えた方が観察した結果を合理的に解釈できるので人間はみな心を持つと考えているだけだ、と考察する。という風に*1、あくまで人間を理解するためのツールとしてロボットの研究をしていることが本書ではずっと繰り返されています。なので、「人間を理解したい」という興味は、研究費の申請書とか論文のイントロで良く書かれている建前的な主張ではたぶんないです 笑。

 

上の心の話もそうですが、心理学や認知科学との関連が強いです。「単純な脳、複雑な私」の内容といくつかリンクしてました。脳にとって身体の存在が重要という話とか。

 

読んでると「人間ってなんだ?」とか「自我って何?」という感じで、境界線が分からなくなってきます。こういう感覚、結構好きです。自分が安倍公房を好きなのは、こういう感覚を味わえるからだったと思う。

 

ロボットとは何か――人の心を映す鏡  (講談社現代新書)

ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書)

 

 

*1:だいぶ適当に要約しました。