水生生物への重金属の毒性、蓄積は色々な要因の影響を受けます。塩分もその一つです。一般に塩分が低いほど、重金属の毒性は増加します。塩化物イオンとの錯体を形成する重金属の割合が減少し、bioavailabilityの高いフリー態が多くなることや、生物膜に対するCaなどとの競合が減ることが理由と考えられています。
Macrobrachium sintangenseというエビ(prawn)へのCd毒性を、塩分0~20 pptで調べた論文。
Putranto TWC. et al., 2014, Effect of cadmium on survival, osmoregulation and gill structure of the Sunda prawn, Macrobrachium sintangense (de Man), at different salinities, Mar. Freshw. Behav. Phy., 1-12.
血リンパと曝露溶液の浸透圧が等しくなる等張点(ここでは20 ppt)―すなわちイオン交換が最も少なくなる濃度―において毒性が最も低くなる、それは塩分の交換とCdの取り込みの経路が同じだからではないか、という話。
誤:The 96 h LC50 of Cd to M. sintangense decreased with increasing salinity.
正:The 96 h LC50 of Cd to M. sintangense increased with increasing salinity.
*1:一般的な塩分-毒性関係と逆のことが書いてあったので、驚いてこの論文を取り上げましたが、ただの文章の間違いでした。至って普通の結果の論文。