水に溶けにくい物質、すなわち疎水性物質(Hydrophobic Organic Chemicals;HOC)の毒性試験はやっかいです。「試験溶液をどうやって作成するか」が難しいためです。
例えば10 µg/L(= 10 ppb)の溶液1 Lを作成したい場合。
はかりでHOCを1 mgまで測定できるとします。対象物質を水に直接添加するなら、水を100 L用意しなければなりません(1 mg/100L = 10 µg/L)。これは水の無駄です。しかも廃棄に困ります。
ということで、従来の毒性試験では、DMSOやエタノールなどの有機溶媒(carrier solvent)に一度HOCを高濃度で溶かし、その有機溶媒を水に移すことで試験溶液を作成していました。「試験溶液にちょっとぐらい有機溶媒が残っていても大丈夫だろう」という考えです。
ただ近年は、「有機溶媒が残っていたら、致死影響はなくても繁殖能とか行動などに影響が出てくるよ」、あるいは「溶媒と試験対象物質が共存すると、相互作用が生じるよ」ということがよく主張されるようになってきたようです*1*2。