備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 分配係数 Kocの値に何を使用するか

このへんの話 の続き。忘れそうなのでメモ。

 

Norman JE, Kuivila KM, and Nowell LH, 2012, Prioritizing pesticide compounds for analytical methods development: U.S. Geological Survey Scientific Investigations Report 2012–5045, 206 p. 

USGSでは、平衡分配法による底質のリスク評価で用いる分配係数Kocの値は、(1) 文献値、(2) PPDB(Pesticide Properties DataBase*1、(3) EPI Suiteの実験値または推定値、の順で優先して使用するそうです(上記Norman et al., 2012の19ページ)。

しかし文献値って何?推定値ではなく実験値のことだとは思いますが、特に底質の種類などについて指定はないのでしょうか。。文献によっては、同じ物質でもKocの値は余裕で1桁、場合によっては2桁以上ずれるはず。

 

なお日本の農薬(のPEC算出)については、「農薬の登録申請に係る試験成績について」に以下のような記述があります。ちなみにタイプ2,3,4,5は、おそらく"clay loam"、"silt loam"、"loam"、"loamy sand"のことで、pH・有機炭素量・clay含有量がそれぞれ異なる土壌(OECD TG106)。

(10)土壌吸着性に関する試験(2-9-10)

① 試験方法

OECDテストガイドライン106(2000年1月21日採択)に準じて測定する。ただし、供試土壌は、原則として当該テストガイドラインに示されている7つの土壌タイプのうち、タイプ2、3、4及び5ごとにそれぞれ1種類以上とし、少なくとも1種類は火山灰土壌を含める。なお、平衡化温度は25℃で測定する。

そして、こういう指摘もありました。Kocのばらつきを考慮するために、算術平均ではなく中央値を使え、とのこと。

*1:PPDBのKoc値はPSD Pesticide Data Requirement Handbook (2005)がソースらしい。