「底質の特性と摂食曝露によって説明される銅の非致死毒性」
Campana O., Simpson S.L., Spadaro D.A. and Blasco J., 2012, Sub-lethal effects of copper to benthic invertebrates explained by sediment properties and dietary exposure, Environ. Sci. Technol., 46(12), 6835-6842..
研究室の勉強会で紹介された論文。色々考えさせられて面白かったです。
複数の環境底質を混ぜ合わせることで、有機含量と細粒分含有率の異なる底質を新たに作成し、硫酸銅をスパイクして繁殖阻害試験をおこなった研究。
繁殖阻害は銅の総含有量ではうまく説明できない。63 µm未満の粒子中の銅含有量を底質の有機含量で基準化したものだと、繁殖阻害をうまくプロットできる。ここまでは良くある話で理解できたのですが、最終的に多くの底質では粒子のdietary exposureが繁殖阻害の主要因であると結論付けていて、それはちょっと消化不良です。
理解できていないだけかもですが、摂食曝露の寄与が大きいという結論の根拠は、「繁殖に影響の出たサンプルにおける溶存態の銅濃度がEC10("clean sand"を用いた銅試験から導出)より低かった」ことみたいです。しかし根拠があまり強くない気がします。clean sand系でのEC10は環境底質系の溶存態銅のEC10と同等なのか? clean sand系では繁殖のベースラインが低くて試験の感受性が悪いということはないのでしょうか。完全に妄想ですが。そういう妄想に反論するためにも、clean sand系での試験も含めて溶存態銅濃度と繁殖阻害の生データをプロットして欲しかったです。
あと3点で用量応答曲線を描くのはやめて欲しいです。
(追記 2015.12.10)
上に書いたのは本当にただの妄想だったかも。この繁殖試験法では、抱卵してから曝露しているので産仔数は曝露底質の有機含量に影響を受けにくいみたい。過去の論文より(Simpson and Spadaro, 2011)。ちゃんと読んではいないので、まだ誤解しているかもですが。