ある生物種のゲノム解析をしていて。 解読したミトコンドリアゲノム配列が、同じ種の既知のミトコンドリアcytochrome c oxidase subunit I(COI)配列と大きく異なっていました。 始めは、既存の報告で隠蔽種の存在が示唆されていたので、自分の読んだ配列と…
環境化学と環境毒性学の国際学会SETAC Europe 29th Annual Meeting@Helsinkiに参加してきました。 SETACに参加するのは、SETAC North Americaを含めてこれで3度目。正直なところ、若干飽きてきたかも。自分が聞いた代替試験法・OMICS・底質毒性・微量化学物…
「人間そっくり」 読んだのは大学生のとき以来。セリフとト書でほぼ構成されていて、安部公房の作品の中ではかなり読みやすいです。1時間くらいで読了。 火星人を題材としたラジオドラマの脚本家である語り部の自宅へやって来た火星人を名乗る男によって翻弄…
「乱交の生物学」に続いて性の進化についての本。有名な「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレドダイアモンドの著作です。さすが、かなり読みやすかったです。 章立ては下の通り。 1. 人間の奇妙な性生活 2. 男と女の利害対立 3. なぜ男は授乳しないのか? 4. セッ…
色々な化学物質によって汚染された底質を対象に、どの物質(群)が有害な影響を及ぼしているのか探索する手法であるSediment TIE(Toxicity Identification Evaluation)を実施した論文。 「時空間的にばらつきのあるデータを用いたSediment TIE研究デザイン…
電車で読みづらい書名。原題は"Promiscuity"という語で、一般には乱婚と訳されるそうです。 "オシドリ夫婦"のオシドリは実は全く一雌一雄ではないというのは有名な雑学ですが、オシドリだけでなく自然界の多くの種は一雄多雌や一雌多雄であり、一雌一雄は例…
某環境系の学術誌に論文投稿して先日受理されました。Major revisionで修正した原稿を返したら、その当日に受理になりました。 5人も査読者がいたので査読対応のコメントだけで20ページにも及ぶ力作を送ったのに、ほぼ読まれてないだろうなー。自分が編集者…
「オオミジンコの遺伝的多様性と生態毒性学的評価」 Picado A., Chankova S., Fernandes A., Simões F, Leverett D, Johnson I, Hernan R, Pires AM, Matos J, 2007, Genetic variability in Daphnia magna and ecotoxicological evaluation, Ecotoxicol. En…
// 固相-液相間でのある汚染物質の分配を考えたいとします。固相Sは例えば底質とかで、液相Lはそれに接している水とかです。平衡状態にあるならば、一般に次の式が成り立ちます。 は固相に吸着した物質の濃度、は液相中の濃度です。平衡状態なら、この比率、…
前回の続き。今回は、STRINGdbから得たPPI networkの情報を、DEG解析(Differentially Expressed Genes)の結果と絡める方法について書きます。 前回までの話 ゼブラフィッシュのPPI networkをSTRINGdbから取得します。例えばこんな感じのデータ。 > full.gr…
タンパク質間相互作用 (protein-protein interaction; PPI) のデータベースであるSTRING (Search Tool for the Retrieval of Interacting Genes/Proteins)。以下は、そのデータを使ってRでネットワーク解析してみた個人的な備忘録です。大部分は"STRINGdb Pa…
Spurgeon DJ, Jones OA, Dorne JLC, Svendsen C, Swain S, Stürzenbaum SR, 2010, Systems toxicology approaches for understanding the joint effects of environmental chemical mixtures, Sci Total Environ 408(18), 3725-3734. レビュー論文。少し古い…
「RNA-Seqデータの特性評価のためのシンプルなガイドライン」 Son K., Yu S., Shin W., Han K., Kang K., 2018, A Simple Guideline to Assess the Characteristics of RNA-Seq Data, BioMed Research International, Article ID 2906292. RNA-Seqのデータは…
帰省中に読了。 昔「単純な脳、複雑な『私』」を読んでから(「単純な脳、複雑な『私』」感想)、この著者のファンです。著者のTwitterからも分かりますが、自身の研究の直近だけでなく、ちょっと遠い研究の面白ばなしも意識的に収集してるんでしょうね。そ…
「Daphnia stressor database: 10年来のDaphniaのomicsデータを遺伝子アノテーションにフル活用」 Ravindran SP, Lueneburg J, Gottschlich L, Tams V, Cordellier M, 2018, Daphnia stressor database: Taking advantage of a decade of Daphnia'-omics' da…
2000年代からアメリカ北部でギンザゲの死亡症候群が見られ、その原因として路面排水が疑われています。以下は、その一連の論文。NOAAとワシントン州立大学あたりが中心に研究してるみたいです。 「Puget Sound都市河川で頻発するギンザケ成魚の死亡」 Scholz…
一昨日、海外学振の面接でした。いや〜ダメでしょうね…。変に期待がなくなってスッキリはしてますが。 面接は11時ちょうどから。その30分前に麹町のビルに到着。受付を済ませて、控え室でスライドの動作確認。控え室には5人ほどの候補者がいて、動作確認とか…
8月の帰省の新幹線で読了。150ページで、タッチも軽いのでさっくり読めます。この分野に興味ある高校生とか学部生が読むのに良さそう。 現在の数学(統計学?)は物理学とともに発展してきたので、まだ実験誤差の大きい生物学には対応しきれていない、今後生…
あとがきにもあるように、DARTHREIDERによる極私的MCバトル史の本。書名は盛りすぎ。 ヒップホップ界隈の一つのイベントでしかなかったMCバトルの変遷について。 2000年代中頃まではラッパーとしての生活の延長上にMCバトルが存在していました。ラッパーの余…
AOP(Adverse Outcome Pathways)に関する話。 ETCに出ていた以下のcompanion papers+αを読んで、AOPの理解が進んだので備忘録的に書いておきます。どちらもOpen Accessです。 ざっくり言うと、「AOPは個々に独立しているわけではなく別の複数のAOPsと関連し…
どうして消毒してはいけないのか。それは、消毒によって細菌だけでなく人間の皮膚の細胞まで破壊され、さらに皮膚が乾燥してしまい、傷の治りが遅くなるから。また、消毒すると、皮膚常在菌が殺されて、その隙に病原性を持つ通過菌(例:黄色ブドウ球菌)が…
誰が最強のMCなのか。MCバトル好きの間では常に議論になることです。 MCバトルの勝敗は、各MCの実力だけでなく、MCのコンディションやMC同士の相性、バトルの審査方法、会場の空気など様々な要因によって決まります。実力あるMCであっても意外な人物に惨敗し…
「底質毒性と進化毒性学のモデル生物:Hyalella aztecaのトキシコゲノム」 Poynton HC, Hasenbein S, Benoit JB, Sepulveda MS, Poelchau MF, Hughes DST, Murali SC, Chen S, Glastad KM, Goodisman MAD, Werren J, Vineis JH, Bowen JL, Friedrich M, Jone…
ひと月くらい前に読了。 バイタリティに富んだ人間という一言に尽きます。 彼が海軍衛生兵としてベトナムへ従軍していた時の話。腹部に傷を負った二人の男が同時期に病院に運ばれてきた。ひとりは生きて当然だと思われたが、すぐに息を引き取った。もうひと…
最近出たEDA(Effect-Directed Analysis)とTIE(Toxicity Identification Evaluation)に関する論文。 「底質の複雑な毒性の診断:TIEとEDA」 Li H., Zhang J., You J., 2017, Diagnosis of complex mixture toxicity in sediments: application of toxicit…
この時の続き。 この秋Marie-Curie FellowshipとCanon European Fellowshipに応募しましたが、12月中旬にCanonからはお祈り通知が来ました。Marie-Curieもおそらくダメだろう、ということで12月末から公募を探し始めました(遅い)。で、実際Mari-Curieはダ…
結果は惨敗。サクラ散る。 Marie-Curie Individual fellowshipはEUがお金を出しているフェローシップです。獲得すると、日本の大学教授並みの給料がもらえ、プラス旅費と家族手当、研究費が手に入り、同業者から一目置かれる(であろう)高ステータスなフェ…
先日WGCNA(Weighted Gene Coexpression Network Analysis)を試しに使ってみました(この記事 → 論文のメモ: 生態毒性研究へのWGCNAの適用)。しかし、遺伝子発現のデータは別に直線関係ばかりではないので(最近読んだ論文のメモ: omicsデータの用量応答…
AOP(Adverse Outcome Pathways)の構築に、網羅的な生物応答の解析技術(omics)を用いて何ができるかというお話し。omicsの中でも特にtranscriptomicsについて。 「化学物質リスク評価へAOPを適用するうえでomicsの果たす役割」 Brockmeier EK, Hodges G, …
「交通関係の汚染に曝露されたブラウントラウトの肝臓の遺伝子発現プロファイル」 Meland S, Farmen E, Heier LS, Rosseland BO, Salbu B, Song Y, Tollefsen KE, 2011, Hepatic gene expression profile in brown trout (Salmo trutta) exposed to traffic …